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120年ぶりの大改正!売買基本契約書の見直しはできていますか?

120年ぶりの大改正!売買基本契約書の見直しはできていますか?

いよいよ「民法の一部を改正する法律」が2020年4月1日から施行されます。この改正により売買契約に関するルールも変更がなされます。
そこで、以下、売買契約に関するルールの主な変更点と売買基本契約書見直しのポイントを解説します。なお、以下では、便宜上、現行(2017年5月26日改正前)民法を「旧民法」、同日改正された民法を「改正民法」として解説いたします。

1 契約成立時期:発信主義から到達主義へ

⑴ 変更点

意思表示は、相手方に到達した時からその効力を生じるのが原則です(到達主義)。もっとも旧民法では、契約の成立時期について隔地者間の契約は承諾の通知を発した時に成立するとして「発信主義」を採用していました。
しかし、改正民法は、旧民法の発信主義の規定を削除し、原則どおり隔地者間の契約の成立においても承諾の意思表示が到達したときに効力を生じるものとしました。この規定は任意規定であり、当事者間の特約により排除することが可能です。

⑵ 契約書の定め方

売買基本契約書において、個別契約の成立時期につき到達主義を採らない場合、その旨明記する必要があります。例えば、注文書・請書のやり取り等で個別契約を成立させる場合、請書の到達時点を契約成立時とする到達主義を採用しない場合は、基本契約書にて、請書の送付時点を契約成立時とする発信主義を定める必要があります。

2 売主の担保責任:瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

⑴ 変更点

売買の目的物に不具合があった場合の売主の担保責任について、旧民法では「瑕疵担保責任」が定められていましたが、改正民法により、「契約不適合責任」に変更されました。
旧民法下では、瑕疵担保責任は、債務不履行責任なのか、そうではなく法律が特に定めた責任(法定責任)かという争いがありました。
今回の改正では、売主が負う担保責任は法定責任ではなく債務不履行責任であることが明確にされ、売主は「契約の内容に適合した給付をすべき義務」を負うこととされました。
その帰結として、改正民法では、旧民法とは異なり「隠れた瑕疵」がある場合だけでなく、「契約内容に不適合」があれば、担保責任を追及することができるとされました。すなわち、契約締結時ではなくとも契約履行までに「契約内容との不適合」があれば、買主の善意悪意を問わず、売主は担保責任を負うこととされました。
また、買主の救済手段として、旧民法で規定されていた損害賠償及び契約の解除に加え、改正民法では、修補や代替物の引き渡し等の履行の追完の請求や代金減額請求も可能となりました。
加えて、改正民法では、売主が負う担保責任は債務不履行責任であるとされたため、民法416条に規定されている一般の債務不履行責任と同様、損害賠償請求には売主の帰責事由を必要とし、その範囲も履行利益にまで及ぶとされました(履行利益とは、契約が履行されていれば得られたであろう利益のことをいい、信頼利益とは契約が有効であると信じたために発生した損害のことをいいます)。
かかる担保責任は任意規定であり、当事者間の特約により排除することが可能です。

⑵ 契約書の定め方

①文言の修正・記載の補充

まず、「瑕疵」という文言は改正民法で使用されていないため、「瑕疵」の文言を「契約不適合」に置き換える必要があります。
また、「契約の内容」とは、合意の内容や契約書の記載内容だけなく、契約の性質、当事者が契約をした目的、契約締結に至る経緯をはじめとする契約をめぐる一切の事情に基づき、取引通念を考慮して評価判断されるべきとされています。従って、紛争予防という観点からは、契約書に契約目的や経緯、品質等を詳細に規定しておくことが有益です。

②買主の救済手段の検討

上述のとおり、改正民法では、損害賠償及び契約の解除に加え、修補や代替物の引き渡し等の履行の追完の請求や代金減額請求も可能となりましたので、売主・買主それぞれの立場からどのような担保責任を定めておくのか、排除しておくのか検討しておくべきということになります。

3 契約解除:帰責事由不要へ

⑴ 変更点

旧民法では、債務者に債務不履行につき帰責事由がある場合でなければ、債権者は契約を解除できないこととされていました。しかし、改正民法では、債務者に帰責事由がない場合でも債権者は契約を解除できることになりました(但し、債権者に帰責事由がある場合、解除はできません)。
また、改正民法では法定解除を催告解除と無催告解除に類型化し、要件を明確にしました。

⑵ 契約書の定め方

契約解除の規定は当事者間で定める約定解除を制限するものではありませんので、従前どおりの解除条項で問題となる点は少ないでしょう。もっとも、以前の法定解除を念頭に作成された解除条項である場合(債務者の帰責事由を必要としている場合)、その妥当性を再度検討する必要があるでしょう。

(原稿は2020年3月16日に作成したもの。内容は筆者の個人的見解です。)

以上

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